作編曲

作曲における「フック」とは何か?考えてみた。

以前、こちらの記事で作曲における「キャッチー」という要素を考察してみました。


しかし、こればかりを意識すると、楽曲がわかりやすくなる一方で、ありふれたつまらないものになってしまうリスクも抱えているのですね。


そこで、作曲家の白戸佑輔さんもこちらの動画でおっしゃっているように、特にポップスの作曲では、「フック」というものが強く意識される傾向にあります。


今回は、この「フック」を考察します。


「フック」とは何なのか?



「デジタル大辞典(小学館)」によると、「フック」の意味としては以下のものが記されています。

 鉤 (かぎ) 。鉤形の留め金。衣服の合わせ目を留める金具。ホック。
 物を引っかけるための器具。鉤。
 ボクシングで、腕を鉤形に曲げて、相手の側面を打つこと。また、その打撃。
 ゴルフで、打球が途中から打者の利き腕の反対側へカーブを描いて飛ぶこと。「フックして左の林に入る」→スライス
 顧客や消費者の興味を引くもの。「店頭イベントをフックにして売り上げを伸ばす」

デジタル大辞典(小学館)

 

 

作曲においては5の意味ですね。
フックとは要するに曲中の「興味を引くポイント」のことです。


以前の「キャッチー」さを意識しただけのメロでは、覚えやすくてもグッとこない淡白な曲になってしまう。

なのでこの「フック」を同時に意識して作る必要があるのでしょう。



「フック」の作り方



結局「フック」ってどうやって作るの?という話になると、これはすごく難しい問題だなあと感じます。



フックとは要するに「グッとくるポイント」なので、程度加減が難しいんですよね。

フックとして機能しないほどありきたりなものではダメかもしれないし、やり過ぎても聴き馴染みが悪くなっては元も子もない。



ただフックの定義が何であれ、個人的には、良い曲というのは常々「緊張と解放」のバランスで作られていると思うのです。



だとすると、この起伏を生み出す要素こそが「フック」とみなせるのではないかなあと感じています。

 

これだけでは抽象的でよくわからないと思うので、具体的に見ていきましょう。




①音飛び



これをフックとみなすかは諸説ありそうですが、個人的にはこれはメロに変化を作る点で意識すべき大事な要素だと思います。



メロディをよくよく分析してみると、楽曲における大事な部分ではこの音飛びが使われていることが非常に多いです。


例えば、Mr.Childrenさんの「innocent world」。




サビの「いつの日もこの胸に」までは比較的平坦なメロの動き方をしていますが、「流れてる」で急に音が飛んでいますね。


こうしてメロに変化や起伏をつけることで、印象に残るメロになっていくんですね。


ちなみに当然ですが、大概の曲はサビになる程起伏が大きくなるようにできています。

そういえばアマチュアの曲ほどサビが平坦だったりすることが多いような気もしますね。



また、ファルセットの使える歌い手であれば、もっと大きな変化をつけることも可能です。


同じくMr.Childrenさんの「くるみ」。


サビ1:25〜の「どんな〜」の部分ですね。

音域的にも声色的にも変化が生じて、ここもグッとくるポイントの一つになっているように思います。



②ドミナントコード



先ほどの①音飛びは、先に述べた「緊張と解放」のうち、どちらかというと「解放」に近い要素でしたが、楽曲にさらに「緊張」の要素を付け加えることで、より印象の強いメロになっていきます。


例えば、私の愛してやまないスキマスイッチさんの「Revival」。





1:01〜のサビを見ていきましょう。


「心が」の部分で先ほどの音飛びが出てきていますね。


そして、「緊張」が表れているのがその後です。


「受け入れたつもりで」の「も」の音が、セカンダリードミナントⅢ7thのコードにおける、♭9の音になっているんですね。

これはコード理論的に強い緊張感が生じます。



その後また「Oh Oh〜」の部分で音飛びを発生させていて、

サビ最初の8小節でも、解放→緊張→解放というようにフックとなる要素が散りばめられていますね。


緊張感ばかりが強いと聴いててしんどいですし、この解放感とのバランスが大事なのでしょう。



③転調



メロの展開の作り方ばかりではなく、コード進行そのものに変化をつけるという手法もあります。


それがこの「転調」。


多く使われるのは、
・サブドミナントマイナー(キーCにおけるFm)
・サブドミナントマイナーの代理コード(キーCにおけるA♭)
・セカンダリードミナントⅢ7
・同じくセカンダリードミナントⅥ7
・同じくセカンダリードミナントⅡ7
・トニックの全音下のコード



などでしょうか。

根本的に調が変わる場合も多いですが、J-POPの部分的な転調では、こういったコードが使われるイメージが強いです。


理論的には、大体が同主調からの借用という解釈ができますね。



転調での印象づけは、やり過ぎたり中途半端に用いたりすると微妙な曲になりがちなので、使いどころは要注意です。


が、①②だけだと作曲における手札が確実に不足するので、やはり大事な考え方の一つです。

まとめ

 

 

今のところパッと浮かんだのはこのようなところでしたが、まだまだ知らないフックの作り方がありそうです。


プロの作家さんがどういったことを意識して作っているのか、自分もまだまだ注視していたいと思います。